江戸切子と薩摩切子

江戸切子物語(5)



日本における切子は、江戸時代の終わり頃、加賀久が透明なガラスの表面に彫刻で模様を施したのが始まりとされていますが、時の流れとともに色被せガラスが多用されるようになってきています。
これは薩摩切子の技法を取り入れたものですが、薩摩切子よりも表面の色ガラスは薄くなっています。

江戸切子はガラスを作る工程と切子細工する工程とに大別されますが、この2つの工程は別々の工場で行われるのが普通です。

ガラス工場ではるつぼの中で熔けているガラスを吹き棹の先端に巻き取り、紙リンなどで形を整えてから吹き棹に息を吹き込んで膨らませます。
大体の大きさになったら、今度はこれを型の中に入れて一気に吹きます。
製品は型に密着しその通りの形になります。
型からはずし、切り取れば一つの製品になります。
透明なクリスタルの場合はこれで良いのですが、最近は表面のみ着色した色被せが多くなっています。
この場合は、型の中で薄く着色ガラスを吹いてから、その中に透明ガラスをもう一度吹く方法や、宙吹きの状態で薄く延ばした着色ガラスをさっと被せて、型の中で膨らませる方法があります。
さらには、着色ガラスを粉にしておいて、これを満遍なく振り掛けてから溶融しなおして表面を着色する方法もあります。
着色ガラスの粉を有機バインダーで溶いた塗料を塗ってから焼き付ける方法もあります。

江戸切子の始まりは、透明な製品でしたが、時代の流れの中で、表面が着色された色被せが多くなっています。
江戸切子の製品は、コップとか鉢の形のものは多く見かけますが、高い足の付いたワイングラスのような形のものはあまり見かけません。

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